第3章 幼き記憶

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「莉菜ちゃんはよく食べるね」 「うん!私お饅頭大好きなの!」 お饅頭。確かに好きだった。 最近は食べてはいたが、味を感じなかった。 そんな時。もう1人の声が玄関から聞こえてきた。 「莉菜ちゃん!一緒に神社へ行かない?」 「あ!翔真君かなー」 「おやおや、翔ちゃんかい?莉菜ちゃん遊びに行っておいで」 「うん!行ってくるね」 「気をつけて~」 「はーい!」 翔真?聞き覚えがない名前だった。 夢なら聞き覚えない名前も不思議じゃないか。 翔真と呼ばれた少年は大人しげなおっとりとした笑顔を浮かべていた。 少し眉にかかるくらいのストレートで柔らかな黒髪がとても印象的だと感じた。 その少年は片手にスケッチブックを抱えながら私の手を引き神社へと向かっていた。 その光景を見た私は、どこか懐かしさと悲しさを感じた。 そこで、視界はしだいに暗くなり・・・ 気がつくと 赤い鳥居と冬茜色の美しい景色に戻っていた。
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