第3話  名付けの権利

3/7
前へ
/64ページ
次へ
「アイリスか、お疲れ。えーっと、子供ってどっちだ?」 「その、ダイちゃんじゃない方です」 「あぁ。赤子の方か。問題ない……」 「どうかされました? 何かご不都合でも?」 「やっぱり名前が必要だよな。あの子だの、灰竜姫だの言ってちゃ可哀想じゃねえか」 バタバタしててすっかり忘れてたが、肝心の呼び名がまだ決まってない。 今日明日にでも名付けちまおうかな。 「よし、赤ん坊の名前を決めるか!」 「賛成! もう遅いくらいだわ!」 「うおっ! びっくりした!」 窓からレイラが顔を覗き混ませて叫んだ。 お前はまだ彷徨(うろつ)いてたのかよ。 「よし、名付け親なら妾に任せてもらおうか!」 「早く仕事行けよオイ!」 部屋のドアをマリィが勢いよく開けた。 「タクミさーん。その権利、私が欲しいですー」 天井の板の隙間からシスティアが頭だけ出してきた。 お前らほんと大概にしとけよ。 子供たちが笑ってるからいいけども、泣き出したりしたら粛清するからな。 それからは阿呆どもがギャアギャアと騒ぎ続けた。 結局その場で決めることはなく、夜に持ち越しとなった。 晩飯後。 いつもの面子が我が家に集まった。 こんな事のために雁首を揃えてる光景が、なんとも滑稽だ。 そう感じる一方で、自分の考えた名前を付けたいとも思う。     
/64ページ

最初のコメントを投稿しよう!

133人が本棚に入れています
本棚に追加