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「はい、ただ今」
「今日はもう目覚めなくていいからな」
「承知致しました」
そう言い終えるなり、イリアがグシャリと床に崩れ落ちた。
まるで糸の切れた操り人形のように、関節を無茶苦茶に歪ませている。
机に突っ伏すとかを想像してただけに、怖い。
「愛の結晶って、そうなんですか?」
「信じるなよアイリス。痛々しい妄想に決まってんだろ」
「全く……みんな浮かれすぎじゃ。もっと地に足をつけて考えい」
「なんだよお前。よっぽど自信があるんだな。えっと、マリィのはどれだ?」
「おいタクミ! 趣旨が変わっておろうが!」
オレはわめき声を無視しつつ、お目当ての紙を探し当てた。
そこに書かれていたのは……。
名前はミリィ。
由来はもちろん妾じゃ。きっと高貴な娘に育つじゃろう。他の愚鈍な名では先行きが思いやられよう。
「マリィ?」
「なんじゃ……ヘムルッ!?」
気を持たせた分、強めの指導だこの野郎。
つうか、匿名って言ったよな?
名前書かなきゃオッケーって訳じゃねえぞ?
文面で書き手が分かるんじゃ意味ねぇだろ!
「クソが、しばらく死ね。じゃあ次いくぞー」
「タクミさん。段々と血生臭くなってませんか?」
「全部成り行きだ。いくぞ」
名前は無し。
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