第3話  名付けの権利

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「はい、ただ今」 「今日はもう目覚めなくていいからな」 「承知致しました」 そう言い終えるなり、イリアがグシャリと床に崩れ落ちた。 まるで糸の切れた操り人形のように、関節を無茶苦茶に歪ませている。 机に突っ伏すとかを想像してただけに、怖い。 「愛の結晶って、そうなんですか?」 「信じるなよアイリス。痛々しい妄想に決まってんだろ」 「全く……みんな浮かれすぎじゃ。もっと地に足をつけて考えい」 「なんだよお前。よっぽど自信があるんだな。えっと、マリィのはどれだ?」 「おいタクミ! 趣旨が変わっておろうが!」 オレはわめき声を無視しつつ、お目当ての紙を探し当てた。 そこに書かれていたのは……。 名前はミリィ。 由来はもちろん妾じゃ。きっと高貴な娘に育つじゃろう。他の愚鈍な名では先行きが思いやられよう。 「マリィ?」 「なんじゃ……ヘムルッ!?」 気を持たせた分、強めの指導だこの野郎。 つうか、匿名って言ったよな? 名前書かなきゃオッケーって訳じゃねえぞ? 文面で書き手が分かるんじゃ意味ねぇだろ! 「クソが、しばらく死ね。じゃあ次いくぞー」 「タクミさん。段々と血生臭くなってませんか?」 「全部成り行きだ。いくぞ」 名前は無し。     
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