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炎が人型に象(かたど)られると、熱波がゴウッと押し寄せてきた。
膨大な熱量の風が、髪や肌をチリチリと焦がしていく。
「現れたか、灰竜姫(はいりゅうき)よ! 妾たちが引導を渡してくれよう!」
「リョーガはオレと前衛! アイリス、マリィ、レイラは下がって援護! イリアは後列の護衛だ!」
熱で揺らぐ視界の中で指示を飛ばした。
たったそれだけでも肺が焼けるように熱くなる。
さらには口の粘膜も一瞬で乾ききってしまう。
戦う前から浮き彫りになる相手の潜在能力に、微かな戦慄を覚えた。
ーーポンッ!
現れたのは生物は、体長がせいぜいが50センチ。
竜と呼ばれる割に、妙に人に近い姿だ。
いや、着目すべきはそこじゃないか。
「なに、あれ?」
「見たところ赤ん坊のようです……けど」
「ようです、というか赤子そのものだろ。なぁマリィ?」
「むむっ!? こんなハズではなかったのじゃが……この力は紛れもなく灰竜姫なのじゃが……」
先程までの緊迫感は熱波に拐われたらしい。
それもそのはず。
目の前には、安らかに眠る赤ん坊が居るだけなのだから。
しかも攻撃や破壊を始める様子は欠片もない。
「なぁマリィさんや? 世界に災いを為す邪悪なバケモノが居るって言ってたよな?」
「いや、その」
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