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「だから乗り込んで殲滅しろって? ムチャ言うな」
「事が起きてからでは遅かろう。悲劇を未然に防ぐのも王の役目ではないのか?」
「わーったよ、うっせぇな。森に近づくの禁止にして、攻め寄せてきたら郊外で倒す。それでいいか?」
「むぅ。もうちっとやる気を出してほしいが、落としどころか」
それきり2人は言い募るのを止めた。
オレもこれ以上譲る気は無かったから調度良い。
そもそも今はみんな忙しいんだよ。
リョーガは内政に掛かりきりだし、軍でも新兵の訓練が始まったばかりだ。
オレは子育てと昼寝で手が離せない。
無意味な外征なんか検討の余地すら無いってこった。
食堂での一件以来、特に異常は起きなかった。
平穏を絵に描いたような時間が、さも当然のように過ぎていく。
子供たちと楽しく遊び、疲れたら眠るという理想通りの日々だ。
スケルトンの話なんかすっかり忘れた頃、それは起きた。
「なんだ、この気配……?」
真夜中の静かな時間。
みんなが寝静まっている最中、遠くに不思議な魔力を持つ集団が現れた。
それは徐々にアシュレリタに近づいてきている。
ひとつひとつの力は小さいが、数はかなり多い。
まるで虫の集団を見つけたときのような、何とも言えない不快な気分になる。
「タクミさん、起きてますか?」
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