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ここ数日の間に魔力の波動とやらが急激に強くなっていて、目覚めの兆候があるとの事。
だから戦備えもそこそこに、急いでやってきたと言うわけだ。
その結果として、オレの腕に乳児が抱かれている。
いや、おかしいだろ。
抗議の目線をマリィに向けるが、ヤツは一瞥(いちべつ)もしないで顔を背けた。
こっち向けよ、首をへし折るぞ。
「それにしても、ずいぶんとタクミに懐いてるわねぇ。ニッコニコじゃない」
「懐かれても困るんだが」
「その割にはアンタも嬉しそうじゃないの。顔がにやけてるわよ」
「そりゃお前、あれだよ。可愛いからな」
頭に二本の角と、トカゲっぽい尻尾が生えてる事以外は、この子も人間と変わりなかった。
プクプク膨らんだほっぺ、丸っこい体。
全身で愛を求めるかのように、父性を刺激するフォルムだ。
さらにはオモチャみたいに小さな手。
その両手がオレの服を掴んでいる。
そんな事をされたら、もう……。
「よし、連れて帰ろう」
「まぁそうなるわよね。知ってた」
「良いのか? 今は無害やもしれぬが、いつ牙を剥くかわからんのだぞ?」
「だったら尚更手元に置いとくべきだろ。様子をみながら何とか対応する」
「ハァ……。また不発弾が増えるんですね」
賛否両論の空気だが、オレの一存で話は決まった。
なにせオレは王様なの。
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