第1話  灰竜姫

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ここ数日の間に魔力の波動とやらが急激に強くなっていて、目覚めの兆候があるとの事。 だから戦備えもそこそこに、急いでやってきたと言うわけだ。 その結果として、オレの腕に乳児が抱かれている。 いや、おかしいだろ。 抗議の目線をマリィに向けるが、ヤツは一瞥(いちべつ)もしないで顔を背けた。 こっち向けよ、首をへし折るぞ。 「それにしても、ずいぶんとタクミに懐いてるわねぇ。ニッコニコじゃない」 「懐かれても困るんだが」 「その割にはアンタも嬉しそうじゃないの。顔がにやけてるわよ」 「そりゃお前、あれだよ。可愛いからな」 頭に二本の角と、トカゲっぽい尻尾が生えてる事以外は、この子も人間と変わりなかった。 プクプク膨らんだほっぺ、丸っこい体。 全身で愛を求めるかのように、父性を刺激するフォルムだ。 さらにはオモチャみたいに小さな手。 その両手がオレの服を掴んでいる。 そんな事をされたら、もう……。 「よし、連れて帰ろう」 「まぁそうなるわよね。知ってた」 「良いのか? 今は無害やもしれぬが、いつ牙を剥くかわからんのだぞ?」 「だったら尚更手元に置いとくべきだろ。様子をみながら何とか対応する」 「ハァ……。また不発弾が増えるんですね」 賛否両論の空気だが、オレの一存で話は決まった。 なにせオレは王様なの。     
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