第1話  灰竜姫

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逆らうヤツは頭ボーンってしちゃうの。 「さぁ、アシュレリタに帰るか」 「その子はタクミが抱いてくの?」 「そりゃそうだろ。オレ以外じゃ騒ぎになるんだから」 オレがこうやって抱っこする前に、他のやつらが既に試していた。 レイラ、マリィだと泣かれる。 リョーガ、イリアだと怯える。 それからオレが抱いて、ようやく落ち着いたのだ。 「あの、タクミ様。私はまだ試していません」 「せっかく安定したから動かしたくねえが、やるか?」 「はい。お願いします!」 「わかった。頭がまだすわってない。首の所を支えてやれ」 「わかりました……よいしょっと」 きっとアイリスでも泣かれるだろう。 そう思いつつ手渡したのだが、予想外の事が起きた。 「キャハーーッ!」 「ええ!? 笑った!」 「キャハハッ キャァー!」 「お、おいアイリス。一度戻してくれ」 「はい、わかりました!」 再びオレは胸元に赤子を抱いた。 すると、さっきまでの笑い声がピタリと止んだ。 笑顔ではあるものの、今の様子に比べたら機嫌も悪そうに見えてしまう。 ちょっとくすぐってみたり、頭を撫でたりしてはみたが、ついに歓喜の声は聞くことができなかった。 「決まりね」 「決まりじゃな」 「なんだよお前ら。何がだよ」     
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