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第1話 灰竜姫
蛇足の第1話 灰竜姫
「みなのもの、決して気を抜く出ないぞ! 死に繋がりかねん!」
マリィの悲痛な叫びが洞窟内に響く。
鋭く睨む目の先には、幾何学的な模様の上で燃え盛る炎があった。
それも普通の炎じゃあない。
どう見ても灰色という、奇妙な色味だった。
「なんて魔力……こいつはとんでもないバケモノよ。戦わずに、一度撤退した方がいいわ」
レイラが自分の肩を抱きながら、呟くように言った。
足も震えていて、立っているのがやっとという有り様だ。
「レイラよ、恐ろしいのは妾も同じじゃ。それでも討たねばならぬ。こやつを野放しにする訳にはいかぬのじゃ!」
「クソが。やるしかねぇってのか」
「タクミさん、このまま一戦を交えるので?」
「少し牽制をしてから、様子を見るぞ。敵わなきゃ逃げるしかねぇ」
目の前の炎は大きくなることはなく、むしろ萎んでいった。
それでも漂う禍々しさは変わらない。
どうやら周囲の魔力を吸い込むようにして集め、エネルギーが凝縮されていってるようだ。
「……止まった?」
揺らめく炎が動きを止めた。
辺りには静寂が訪れたが、それも束の間。
高さ1メートル程の炎が輝きながら、形を変えていく。
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