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「そこで、今年はダーツというわけや。風流やろう?」 「こ、こんな適当なやり方で勤務地を決めるなんて、人事を軽視し過ぎです!」 「たわけ!」 ジョーは、反論する嘉門の眼にダーツの針を向けた。 あと数ミリで眼球を潰さんとする針に、嘉門は恐れおののき失禁した。 「ガタガタ言うな。黙って投げろ」 膝を震わせながら、地図に向かう嘉門。 あと五年さえ穏便に過ごせば、その先に待つのは順風満帆な老後人生。そう思った矢先、まさかこの一投で勤務先が変わると思うと、自然と涙が零れた。 「悪く思うなよ。寧ろ貴様にチャンスを与えてやっているのだ。投擲さえ上手くいけば日本で働ける」 何度も地図に焦点を合わせ、狙いを定める嘉門。 「言い忘れていたが、的から外れたら処刑するからな」 「わ、分かりました」 なんとか日本に当たってくれ。 せめて先進国であってくれ。 「早くしてくれ。ワシは忙しいんだ」 額から玉の汗を流し、焦る嘉門。 「えいッ!」 意を決して矢を投じ、グサリという鈍い音が会議室に木霊した。 「おや、妙な場所に刺さったな…」 うすら目を開ける嘉門。 ダーツの矛先は、嘉門の思いとは裏腹に進むのであった。 「まあ良い。そこが貴様の新たな勤務地だ。がっはっは」 そう言ってジョーは颯爽と会議室を去って行った。 ゆっくりと地図に近づく嘉門。 予想もしない結末に、膝から崩れ落ちた。
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