虫籠からあふれた病

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「面倒だ」と受け取った紙に記入し始める。 「金もらって帰るならこっちが近い」 受付の男性職員はボールペンの先端でクーラーボックスを小突き。 「で、コイツは何をしたんだ?」 「…食ってた」 「は?」 「人の顔面を食ってた」 心底、胸くそ悪いと言う表情で 「なんで殺すだけじゃダメなんだ」 「…こんなの建前かもしれんが、それじゃただの犯罪者になっちまう、俺達は仮設でもキャリアー保護団体だ」 「チッ、何が保護だ、ちょん切った首で金払うくせに」 「まぁ、それにしても顔食われるまでソイツがそうだって気付けないバカも最高にバカだな」 「おいおい、勇治よ消防には…」 「したよ、めんどいけど」 記入された書類をチェックしながら 「お前みたいに見ただけで分かる奴はそういねぇよ、"誰しも気付けば隣人が"ってやつだ、それがこれの恐ろしさだよ」 「…」 ◇◇◇ 12歳、優しかった姉が突然人が変わったように狂暴になり両親を殺した。その日は雨で両親を殺した姉は自分にも襲いかかってきた。降りしきる雨の中隣家に飛び込み助けを求めた。 人生には大げさではなく運命が変わる瞬間がある。勇治はこの時運命が変わる音を聞いた。 世界が変わった。 12歳で天涯孤独になり、日々報道された羽化病のニュースの影響で酷い差別が始まった。 無理解な周囲の声は 「あの子、そう、お姉さんが…」 「きっとあの子も…」 そんな中ハンターギルドの設立があり、そして気付く自らの違和感。 キャリアーの医療従事者を見つけ血液検査を受けた。 「…この、結果は?」 「…ここに有るだけです」 薄く子供らしくない笑を浮かべ 「そうですか」 「!!」 「あんた、キャリアーだろ?後ぐらい、だから俺の話しをのんだ…」 「くっ…」 その医療従事者は手近な刃物を手に取り振りかぶる。 右腕に走る痛み。 勇治はすでに
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