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二人から話を聞いていて意外だったのは、奥さんも旦那さんもお互いがいくら稼いでいるのか知らないということだった。奥さんは、「たぶん私のほうが少し多いと思います」と言っていた。
夫婦による家族会議で決めた一定額を出し合い、それで家計をやりくりしていた。奥さんに素朴な疑問をぶつけてみた。
「それじゃ、不公平なんじゃないの? 『多い人からは多く、少ない人からは少なく』というのが日本の税制の基本なんじゃない?」
「ヤですよ、そんなの。そんなことしたら、私のお小遣い減っちゃうじゃないですかっ!」
「じゃさ、各自の収入の何%を家計として納めるというのはどう? これなら公平になるんじゃない?」
「ヤですよ、そんなの。そんな計算したら、私がいくら稼いでるかバレちゃうじゃないですかっ!」
私が以前勤めていた病院の院長先生の場合は、さらに違うやりくりの仕方だった。月々に必要な金額を奥さんに申告してもらい、その額を院長が生活費として奥さんの口座に振り込んでいた。生活費を除いた残りはすべて院長のものだった。
「えっ? それじゃ奥様は、院長が一体いくら稼いでいるのかご存知ないんですか?」
「知らないよ」
「奥様に知らせなくていいんですか?」
「知らせないほうがいいじゃん」
「しかし……」と言いながら、私は考え込んでしまった。遠い将来のことを考えてみたのだ。
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