1人が本棚に入れています
本棚に追加
/12ページ
顔を歪め、不気味な笑顔で目をせわしなく動かしている悪モンがすぐそばにいる。腕や足は太くなり、窮屈そうに服が張っている。伸びた腕には濃い体毛で覆われている。爪もどす黒く、するどい。どことなく、クマに似ている。
悪モンが、ケーイチたちの横を通り抜ける。
今だ! そう思って、ケーイチはスターステッキを握りしめ、地面を蹴った。
このまま、通り過ぎていく悪モンの背中にスターステッキをぶつけよう、そう思っていた。しかし、ケーイチの想像とは違うことが起きてしまった。悪モンが立ち止まったのだ。どくん、とケーイチの心臓が跳ねる。悪モンが、ゆっくりとケーイチを見る。
飛び出した目が、ケーイチをとらえた瞬間に、悪モンの口元が歪んだ。たまらなく嬉しそうに、残酷に笑っていた。
太い毛むくじゃらの腕が振りあげられる。
あぁ、あの腕の爪で、八つ裂きにされる、とケーイチは不安になる。スローモーションのように、悪モンの腕の動きが見える。ゆっくりと、弧を描きながら、ケーイチに迫る。
ケーイチは、たまらずに目を閉じた。
「をおおおおおおおおおおおおおおん」
直後、悪モンの、苦しみに満ちた声が聞こえた。咄嗟に目を開く。悪モンが、両目を覆うように手で押さえ、ふらついていた。地面に、コユキのスターステッキが転がっている。
「でかしたぞコユキ!」
コユキが得意そうに、大きく頷いた。
最初のコメントを投稿しよう!