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プロローグ
屋敷を包む炎はまるで意志を持った竜のごとく渦を巻きながらその勢いを増し、既に屋敷の半分以上が竜の餌食となっていた。
屋敷の者達は使用人を含めあらかたの避難は済んでいた。
一番奥の部屋をのぞいては・・・。
その部屋で今まさに二つの命が元気な産声を上げた。
「華弥様、よぉ頑張りなされたなぁ。可愛い男の子が二人。どちらも元気な子でございますぞ」
乳母の泰乃は取り上げたばかりの二人の赤ん坊を白い布で包むと華弥の顔の両脇にそれぞれ赤ん坊を置いた。
華弥は首だけを左右に動かして二人の赤ん坊の健やかな表情を見ると、力なくそれでも幸せそうな笑みをこぼした。
赤ん坊の声を聞き、隣の部屋で待機していた父親の誠達も華弥の元へ駆け寄り、優しくその額に手をあてた。
「よく頑張ってくれた。礼をいうぞ。華弥」
「誠達様・・・我が子を抱きたいのです。起こしてください」
誠達が華弥の背中にそっと手を添えてその体を起こすと、華弥は身をよじり一人の赤ん坊を抱いて、誠達に渡した。
そして自らはもうひとりの赤ん坊をそっと抱き上げた。
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