第3章 次元を超えて

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第3章 次元を超えて

この世界での最後の夜・・・ 加えて仁の話。 なかなか寝付けないでいた真貴も、うとうとと夢の入り口にたどり着いた・・・ と、その時。 「真貴―っ、起きろっ」 頭のすぐ上から降ってきた仁のけたたましい声で、真貴は飛び起きた。 「なっ、なんだぁ?」 真貴は布団の上に座りこむと、枕を抱えて呆然と仁を見上げた。 「行くぞ?」 「はぁ?」 時計を見ると、の針は2:30をさしている。 もちろん真夜中だ。 「今何時だと思ってんだよ~」 大きなあくびとともに、よわよわしく抗議した。 「ばかやろう。向こうの世界に戻るのに堂々と真昼間に戻れるわけねぇだろ」 ―あぁ・・・・そういうことか・・・ 真貴はまだ寝ぼけている頭で何とか理解すると、立ち上がりふらふらと洗面所へ向かった。 顔を洗い、コンタクトを入れるとだんだん意識が覚醒してくる。 「じゃ、行くか」 無駄に元気な仁に真貴は、怠そうに返事をする。 「あぁ」 この世界と向こうの世界とでは、環境が違いすぎるために荷物はほぼない。 真貴が持つのは漆黒の扇子、一本のみ。 真貴が生まれた時から、肌身離さず持たされていたものだ。 「なぁ、このマンションとか荷物とかどうするの?」     
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