667人が本棚に入れています
本棚に追加
次の日の朝。レンは背中に寒気を感じながら朝日を浴びていた。隣では焚き火で朝食の支度をしているシンクが軽く鼻歌を歌いながら料理を作っていた。
「‥なにか、嫌な感じの朝だな。水場にも動物や魔物がいない」
レンは立ち上がり、馬車の上に乗ると水場のある方を昨日も使ったホークアイを使って水場のあるほうを見ていた。
「レンさん? どうかしたんですか?」
馬車の中からシキが顔を出してレンの方を見上げて言う。シンクも料理を作りながら、レンを見上げて首を傾げていた。
「‥んー、なんでもない。たぶん気のせいだ」
レンは少し考えてからそう言って、馬車の上から跳び降りた。この判断が後に大変なことになるとも知らずに。
「‥ウィンターウルフどころか、動物が全然来ませんね」
「なにかおかしいね」
あの後、レンたちは朝食を済ますと昨日ウィンターウルフが来るのを待っていた場所に来て、身を隠していた。
シキがなにかを思いながらもそう呟きながら見張りをしていた。シンクもシキの呟きを聞いて茂みから顔を出してそう言った。アルトは空を見上げて曇ってきた空を見ていた。
その後ろでレンは朝から感じてる嫌な感じが強くなっているのを感じていた。
「レン、大丈夫なの? なんかへんな汗かいてるの」
コートの中を移動してきて、レンの耳元まで来たファルがコートの中からレンに話かけてきた。
「あぁ。朝から何か変な感じがしていてな。こういうのは初めてでどうしらいいかなと」
「レンは記憶喪失だから、忘れてるだけできっとなにかあると思うの。そういう時は即時即決した方がいいって、かあさまが言ってたの」
「そうだな。てっーっ!? 全員、伏せろっ! 何かくる!」
レンはファルの話を聞いて、撤退しようと言おうとしたが急にさっきまで感じていた嫌な予感がレンを襲い、とっさにレンは小声でアルトたちに伏せるように言った。
アルトたちはレンに言われたことに従って身を伏せた。
レンは伏せながらゆっくり移動してシキの前まで行くと茂みから顔を少し出して水場を見た。
そこには1頭のウィンターウルフがいた。体長はその倍ほどあったが。
レンは鑑定をしようとした時、そのウィンターウルフと目が合ってしまった。
最初のコメントを投稿しよう!