事実は小説よりも・・・

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 女が唐突に顔を男の方に向ける。 「あら、どうしたの? 黙りこんじゃって。フフフ。冗談よ、おばかさん。本気にでもしたの? アンタ、体のわりに神経が細いのねえ。フフフ・・・・・・」 「冗談? 冗談にしたってーー悪趣味が過ぎて」  男の声はかすれて、語尾が聞き取れない。  フフッ  夜闇のなかに女の笑い声が低く響く。  低くーー長く・・・・・・。  その手のあたりで、何かが野外灯の光を反射したようだ。  背も高く、体格のいい男の顔は、  くしゃくしゃの、ちり紙みたいに歪んでいた。  満開の、それはそれは美しい桜の花の下に、もっともふさわしくない表情だった。  女の悪趣味きわまりない物言いに引いて、不快さを顔にあらわしているのでなければ。  男は何かの痛みを感じているのかもしれない・・・・・。
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