襲来

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画面には延々と広がる原生林と、その向こうに湖のようなものが微かに見える。火星のライブ・ビューイングだ。火星の地上部隊基地についているカメラの映像を、量子通信によってリアルタイムで流しているのだ。 "はい、皆さん!こんにちわ。こちら火星のアカツキです" 音声案内は道行く人々の耳につけたヘッドレストにしか届かない仕組みだ。 "今日も火星はいい天気です。おや?向こうの湖にプロントサウルス種の群れが見えますよ。少しカメラをズームアップしてみましょう。今日は皆さん、運が良いですね" 「ママー、見て見て!ほら、恐竜さんがいるよ!」 道行く小さな子どもが母親の手を引く。 「ほんとね、こんなにいっぱい居るのを見たのは初めてだわ。火星も、ホントに環境が良くなったのね」 片手で日差しを遮りながら、母親はディスプレイを見上げている。 「ママー。ボクね、大きくなったら火星へ恐竜さんたちを見に行くんだ!」 小さな子どもは、そう言って目を輝かせていた。 「そうね、楽しみね。きっと行けるわよ」 母親は微笑んで、大きく頷いた。 < 同時刻 火星、地上本部からおよそ50kmの地点 > ガササ・・・ パキッ・・・パキッパキッ・・・ ウィィィィィィ・・・ン・・・ウィィ・・・ン・・・ ザザザザー・・・・! 鬱蒼と生い茂る原生林の中を縫い、僅かな木々の隙間から辛うじて届く僅かな木漏れ陽が足元を照らしている。     
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