28人が本棚に入れています
本棚に追加
「隣に答えを教える余裕があるようだから、あなたに答えてもらおうかしら」
勘違いされた恥ずかしさに顔が赤くなり、おろおろと立ち上がる。
数学は苦手だし、その担当でもある篠島先生もどこか冷たい印象だ。
塁が罰が悪そうに腰をおろしたのが視界の端で見えた。
黒板に向かい、数式を見つめた。
数字の羅列ばかりで、どう答えを導けばいいのかまったく分からない。
腕を組む篠島先生の鋭い視線が針みたいに刺してくる。
大きく篠島先生がため息をついた。
「御園生さんは学級委員でしょう、きちんと予習してこないと見本になりませんよ」
大声でもないのに先生の言葉は厳しくて思わず俯いた。
教室の誰かが小さく笑ったのが聞こえて、顔中の温度があがった。
心臓がきゅっと縮んだ感じがして、胸の奥が塞いだ。
「御園生さん、いいわ。皆さん。御園生さんだけじゃないからね、予習をしてくればこの問題は簡単に解けるもの。最近、少したるんできてるようだから……」
篠島先生のいつもの小言が始まった。
「澪、気にしない方がいいよ」
席に戻る途中で、仲のいい昌美がこっそり声をかけてくれる。
塁が、かすかに顔をあげたような気がしたけれど、落ちこんだ澪には気づく余裕もなかった。
最初のコメントを投稿しよう!