ほんの少しだけ、近くなれた?

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「隣に答えを教える余裕があるようだから、あなたに答えてもらおうかしら」 勘違いされた恥ずかしさに顔が赤くなり、おろおろと立ち上がる。 数学は苦手だし、その担当でもある篠島先生もどこか冷たい印象だ。 塁が罰が悪そうに腰をおろしたのが視界の端で見えた。 黒板に向かい、数式を見つめた。 数字の羅列ばかりで、どう答えを導けばいいのかまったく分からない。 腕を組む篠島先生の鋭い視線が針みたいに刺してくる。 大きく篠島先生がため息をついた。 「御園生さんは学級委員でしょう、きちんと予習してこないと見本になりませんよ」 大声でもないのに先生の言葉は厳しくて思わず俯いた。 教室の誰かが小さく笑ったのが聞こえて、顔中の温度があがった。 心臓がきゅっと縮んだ感じがして、胸の奥が塞いだ。 「御園生さん、いいわ。皆さん。御園生さんだけじゃないからね、予習をしてくればこの問題は簡単に解けるもの。最近、少したるんできてるようだから……」 篠島先生のいつもの小言が始まった。 「澪、気にしない方がいいよ」 席に戻る途中で、仲のいい昌美がこっそり声をかけてくれる。 塁が、かすかに顔をあげたような気がしたけれど、落ちこんだ澪には気づく余裕もなかった。
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