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「一之宮――」
「暖っけえ……」
氷川よりも身長も低く華奢な紫月は、すっぽりと腕の中へと収まってくる。
「バカだろ、俺――。どうしょーもねえクズ野郎だ……」
苦しげに瞳を濡らしながら笑う彼を、氷川は思い切り抱き返した。
「一之宮――もう苦しむな。いつか――天国に行ってカネに会った時は、その時はどんな詰りも制裁も全部俺が受ける」
「氷……川……?」
「だからもう無理をするな。寒いなら俺が温めてやる。こんな俺でいいなら――いつだって俺は……」
「氷川……」
「お前は何も悪くない。カネを裏切るわけじゃない。全部、俺のせいだ。お前を温めたいと思うのは俺だ。お前を包みたいと思ったのも俺――。だからお前は悪くない」
「氷川……」
彼の顎先を掴んで持ち上げれば、涙に濡れた瞼が閉じられ――と同時に色白の頬が薄紅に染まった。
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