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春朧
「――ふん、アブねえのはお前らの方だろうが? 下校途中に制服のまんまでラブホから出てくるなんざ、イカれてるとしか言いようがないがな?」
表情一つ変えずにそう言い放つ男に一瞬絶句させられる。
それは今から五分程前、この部屋を訪ねた時から始まった言い争いの中で起こった出来事だった。
◇ ◇ ◇
「いー加減にしてくんねえッ!? だいたい、俺らのことプロデュースさせてくれっつったの、アンタの方じゃん!」
全面ガラス張りのパノラマの壁面、その背後にはまばゆい大都会のウォーターフロントが心を躍らせる。そんな景色に似合いの重厚そうなデスクに静かに腰を下ろしたまま、微動だにしない男を睨み付けながらそう啖呵を切った。
「あんた、俺らの音楽に惚れてスカウトしたんだろ!? そりゃ、デビューさしてくれたのは正直有り難えと思ってるし……ッ、けど何でこう毎回毎回出す曲バラードばっかなんだよ! そろそろ俺らの音楽、やらしてくれてもいんじゃね?」
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