魔剣

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・・・・・・ 「陛下、恐れ入りますが私は賛成できません。」 先頭に追い付き、事情を説明すると第6兵隊の副隊長であるニールセンはしかめっ面した。 「大丈夫です。危険だと察知したらすぐに撤退します。」 私がそう言うとニールセンはナイトをキッと睨んだ。 「しかし、陛下はご存知ないかもしれませんが、こいつは裏切り者です。いつ陛下を裏切るかわかりませんよ。」 あぁ、またその話か、とマコトは心の中でため息をついた。 「副隊長、ナイトは私を裏切ったりはしません。」 「それは陛下が以前のこいつを知らないからです。」 そう言われてしまわれると何も言い返せない。だって、私は以前のナイトを知らないから。 「以前は知りませんが、今のナイトを私はわかっています。」 正しくはわかっているつもり、だ。 「ニールセン副隊長、」 エリアスが話掛ける。 「もしこいつが少しでも変な行動をとれば、私がこいつを殺します。」 殺す、、、それはこの世界では冗談では通用しない言葉だ。 「エリアス隊長、、、本当に良いとお思いですか?」 「はい。特殊部隊の二人も一緒ですし、スーにぃ、、、スヴェン隊長がいても許可したでしょう。」 しばらく考えるようにニールセンは私とエリアスを交互に見ると諦めたようにため息をついた。 「エリアス隊長が言うのであれば、、、しかし、陛下、充分にお気をつけ下さい。」 納得していなさそうなニールセン副隊長に頭を下げる。 「ありがとうございます、ニールセン副隊長。」 ・・・・・・・・ 「お嬢様、ありがとうございます。」 「あ、うん。」 ナイトから言われ、一瞬、何についてお礼を言われたのかわからなかった。 「エリアスもありがとうございます。」 「別に。本当の事を言っただけだ。」 エリアスはぶっきらぼうにそう答えた。 蹄が土を蹴る音が響く。 忙しそうに馬の頭が上下に揺れている。 その前には精鋭部隊の二人が馬を走らせているのが見える。 この二人とは戴冠式の時にも一度顔を合わせているが、その時は名前までは聞いていなかった。 「あのー、お二人は何ていう名前なんですか?」 蹄の音にかき消されて普通なら、距離的に聞き取ることできないであろう私の声に反応して二人は振り向いた。 片方が私の元まで馬を引くと、胸に手を当てた。 「陛下、わたくしのことはツーとお呼びください。こちらはフォーと。」 あ、そうだった。精鋭部隊はコードネームなんだっけ? 「わかった。えーと、紺色がツーで、紫がフォー。」 紺色、紫色、というのは髪色のことだ。 そういうとツーはにこりと笑った。 「そうです。よろしくお願い致します。」
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