魔剣

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まぁ、欲張りセットのこの世界のことはまた後にするとして、、、 「スヴェン様、」 ナイトが促すと仏頂面のスヴェン・フォン・バイルシュミットは口を開いた。 「陛下は臣下もまだ少ない。今城を空けるのは危険です。」 資料に目線を戻すと彼は言った。 「まぁ、そうかもしれないよね。帰ってきて知らない人が王になってたら、ヤバイよねぇ。」 ははっと笑うとギロリと睨まれる。 おお、怖い。 「笑い事ではないでしょう。」 「城を空けるのは相当危険だってことはわかるんだけどね。」 弱肉強食。力が全て。 下剋上もあり得るこの国のルールでは、国王を殺した者が、または城を乗っ取っても国王の資格を持つことができるのだ。 そんな中、国王の敵は城の中にも外にもいる。 前の王がひどかっただけ、私に期待をしている人も多いだろうが、信用を得たわけではない。 中には私が女だから、または異世界から来た異人だから、と反感を持っている兵もいる。 事実、第6兵隊長のライト・マクレーンとは一戦を交えたし、食事には毒を盛られる有様だ。 「でも、やっぱり私が魔剣を直接取りに行きたい。魔力の強い人を行かせればいいと思うんだけど、私は臣下以外は信用してないし、下手に魔力の弱い人が近づけば死ぬこともあるんでしょ?私の魔力量ならその心配はないはず。」 一般兵に取りに行かせるのが【正解】だ、ということはわかっている。 しかし、魔剣は持っているだけで魔力を消費し、しかもその量は魔剣によって異なるというのだ。 もし、大量の魔力を要する魔剣であれば、当然魔力の強い人でなければ持つことはできない。 それに、先ほど思い起こしたように裏切り者やスパイに魔剣を取られる、という可能性だって充分にある。 「わかりました。そういうことなら、アルベルト兵隊長に隊を編成するように言っておきます。」 「あっ、ありがとう、スヴェンさん!」 もう少し小言を言われるかと思ったけれど、あっさり許可をくれたスヴェンさんに感謝しながら、席を立つ。 そうと決まれば、準備をしないと! 予備の服とかいるかな? 日焼け止めも忘れないようにしないと! 「行くのはいいが、その資料を片付けてからにしてください。」 「えぇー、、、」 仕方なく椅子に座り直す。 「では、私は他の者に話を通してきます。お嬢様はもう少し頑張ってくださいね。また迎えにあがります。」 「あー、いってらっしゃい。」 ナイトは早々と部屋を出て行く。 「僕も予定を調整してくるよ。」 「あ、エリアス、、、」 「ん?」 エリアスは不思議そうに振り向く。 スヴェンさんと2人は気まずい、というか何と言うか、、、と本人の前で言う訳にはいかない、、、 「い、いや、何も。」 「じゃあ、頑張ってね。」 そう言うとエリアスも部屋から出て行ってしまった。
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