魔剣

21/23
前へ
/128ページ
次へ
・・・ そうだ。覚悟はできている。 冷静に。冷静に。 マコトは自分に言い聞かせた。 あたりには鉄の匂いが充満している。 それだけで、嫌な予感は充分している。 覚悟を決めて目を開く。 積み重なった兵。 生きているのか死んでいるのかわからない。 土に染み込まないほどの大量の血液がその下に溜まっている。 この光景から目を離すわけにはいかない。 これが自分が生み出した結果なのだから。 心臓が音を立てるのがうるさい。 冷静になりきれていない証拠だ。 「マコト、」 エリアスの心配そうな声が聞こえ、そちらを向こうとした時だった。 「出ておいでよ。君たちを待ってたんだあ。」 積み重なった兵の上に座る白髪の少年がこちらへと話掛ける。 「出てこないなら、こっちからいくまでだけど。」 その言葉に マズイ!とは思ったが、体は反応してくれなかった。 「お嬢様!」 ナイトが叫んだ声が聞こえたかと思うと体が前に跳ね飛ばされる。 ナイトが私を掴んで思いっきり前に飛ばしたからだ。 結構雑に突き飛ばされたことに余裕のなさを感じる。 なんとか受け身をとり、瞬時に刀を抜くと顔を上げる。 ナイトとエリアスが既に2人ずつスーツの男達と剣を交えているのを視界に捉える。 また、フォーとツーにはそれぞれ他のスーツが追いかけて行くのが見えた。 みんなとだいぶ距離があいてしまったが、こちらには、誰も来ないようだ。 とりあえず、エリアスに加勢するのがいいかな。 「ホリー様、全力で逃げて下さい!!」 駆け出そうと片足を上げた瞬間、ナイトがこちらに向かって叫ぶ。 いや、ホリーって誰? あ、私か。 これは、予め決めていた偽名だ。 私の名前は、ヒイラギ マコト。 ヒイラギは英語でホリー。 だから、ホリーってことだ。 ちなみに、提案by私。 「逃がしませんよ。」 ふいに背後からず太い声がしたかと思うと背中に激痛が走る。
/128ページ

最初のコメントを投稿しよう!

40人が本棚に入れています
本棚に追加