魔剣

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「貴様!!!」 「お嬢様!!」 エリアスとナイトが同時に叫ぶ声を風を切る音がかき消す。 交通事故?? 後ろから車にぶつかられたのではないかと一瞬思った。 衝撃と共に体が飛ぶ。 宙で回転する体をなんとか安定させようと頑張ったが、結局受け身を取れないまま地面を転がった。 こんなに地面と戯れたのは中学生時代の組体操以来だ。 「いった、、、」 皮膚を擦りむくのも久しぶりだ。 でも、ノスタルジーに浸っている場合ではない。 手をついた地面は濡れている。 いや、手をついたところだけではない。 地面に面しているところから真っ白の軍服は赤黒い液体を吸い込んだ。 それが何かなんて確認しなくともわかる。 が、マコトはゆっくり後ろを振り向いた。 自国の兵が乱雑に積み重ねられている。。 白目を向いている者。 口から血を流している者。 頭や指先から血が引くのを感じた。 右手の古傷が心なしか痛い。 「あぁ、やっぱり。君だ。」 そのてっぺんに座っている白髪の少年は私と目が合うとにこりと笑った。 どこかで会ったことがある? 必死に今まで会ってきた人物の中からそれらしい人を思いだそうとするが、血の引いた頭では何も思い浮かばない。 何で、こんな肝心な時に何も考えられないんだ!! そうしているうちに少年はニコリと笑って言った。 「あぁ、部外者には取りあえず、退いてもらおうか。(ジー)、やっちゃってよ。」 G? 思わず台所で遭遇する黒光りするアイツが頭をよぎる。 でも、普段なら愛着のわかないアイツらのがまだかわいい方だと近づいてきた男を見て思った。 2メートルはある巨体。 来ているスーツは彼の筋肉ではちきれそうにパンパンに張っている。 髪色は黄緑色。 距離的にこの男が先ほど私を後ろから蹴とばしたことになるが、そうだとしたらよく私の背骨は砕けずに済んだものだと我ながら感心する。 大男はナイトとエリアスの方に向く。 そうなると私には背中を向けることになるがそれは私が攻撃しないと分かっての事なのか、ただ、相手にしなくてもいいと思われているのか。まぁ、後者なんだろうが。 男は背中に差している剣を引き抜く。 魔剣だ。 私の勘がそう言っている。 見えるはずのないまがまがしいオーラがその魔剣に纏っているように感じた。 「ナイト、エリアス、逃げて!!!!!」 しかし、2人ずつを相手にしているナイトとエリアスが簡単にその場から逃げれることもなく、そのまま男は剣を振り下ろした。
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