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「ナイト様、どうされたのですか!?」
馬車に入ると驚いたように看護婦がこちらへ駆け寄ってくる。ブロンドの綺麗な髪が頭の上で結われてある。
若いな。それに見慣れない顔だ。
尤も、救護班にお世話になることなんて以前と違い最近は滅多にない。
「君は新人さん?」
俺がそう聞くと彼女は声を弾ませた。
「は、はい! トリーネ、と申します。ナイト様にこんな形ですが、間近でお会いでき光栄です。」
珍しい。
最近の人間はめっきり俺に近づきたがらないのに。
一方、唯一の医者は迷惑そうに目を細めた。
「何か用か?」
「バイザーさん、実は大した怪我ではないのですが、国王陛下がどうしても見てもらえって言うんで。あぁ、ツーを優先して下さい。私は後でもいいですので。」
横たわるツーの側にいたバイザー医師がこちらへくる。
「こやつはもう大丈夫だ。うまい具合に急所を外して痛めつけられているだけだ。」
だけって、それが一番痛いのを知っているくせによく言う。
ツー、しばらくは生き地獄だな。
「なるほどな。うん、大したことない怪我だ。」
バイザーは俺の腕を手に取ると呟いた。
「大したことない怪我、ではないですよ。こんなの、痛々しくてひどいです。ナイト様もウェールズの方々にやられたのですか?」
「詮索は止めなさい。」
バイザーがトリーネにピシャリと言った。
「はい、すみません。」
「おい、そんな事より、足の治癒が追い付いてないだろ。」
そう言うとバイザーは俺の足を叩いた。
「いっっ、、、さ、すが、です。」
痛みを我慢しながら答える。
なんてドSぶりだ。
「足音が変だったからな。」
バイザーが俺のズボンを破る。
トリーネは俺の足を見るとはっと息を飲んだ。
「何が貫通した。」
「木の枝です。すぐ引っこ抜いて止血をしました。」
「なるほど、止血だけか。」
「えぇ。」
「何でこちらに治癒の魔法を回さなかったのですか?こんなの、足もひどい怪我じゃないですか。」
トリーネは薬品入れをガサゴソかき回しながら聞いた。
「腕の方が女王陛下の目につくからだろ。」
バイザーは鼻を鳴らしながら俺の代わりに答える。
さすが。お見通しってやつか。
いくら怪我をしようが、怪我は所詮怪我だ。
いくら傷ついても治せばいい。
しかし、あの方は敏感だ。
目に見えるところだけ、とりあえずまともにしておけばうまく騙されてくれると思ったのだが、、、結局ここに来る羽目になってしまった。
「で、お前などどうでもいいが、我らが陛下に怪我させてないだろうな?」
「どうでもはよくないですよ、、、」
バイザーの言葉にトリーネが呟いた。
「えぇ、勿論。仕事ですから。」
俺がそう言うとトリーネは不思議そうな顔をした。
「ふん、仕事、な。」
バイザーも納得のいかなそうな返事だ。
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