魔剣

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城門をくぐると国民の手厚いお迎え付きだった。 「なにこれ。聞いてないんだけど。」 道の両端には老若男女が犇めきあっている。 歩道、家の窓という窓から人々が興味深々でこちらを見ている。 陛下ー!!といろんなところから声が飛んでくる。 「早馬が先に道を開けましたので、それで気づかれるのです。今日は、陛下がいますので、更に人数が増えていくでしょう。」 ナイトが耳打ちをする。 こんなに注目を浴びるのは王位継承戦以来だ。 えーと、手は振り返した方がいいのかな? 「お嬢様、気を付けて下さい。中に敵がいるかもしれません。我々も警戒しておきますが、充分お気をつけください。特に飛び道具には。」 「あ、うん。」 上げかけていた手をおとなしく手綱に戻す。 横を見るとナイトは右手は手綱を、左手を剣の柄に置いている。 逆を見るとエリアスも右手ですぐ剣を抜けるようにしている。 さすが、軍人。 「もし、誰かが襲いかかってこれば、出発前に言った通り、手綱を引いて隊の中に入ってくださいね。」 敵 というのは、他国の者であったり、国家転覆を狙う組織のことだ。 何年か前はその一員であったことは口が裂けても言えないが。 「と、言われても、どこを見たらいいのか。どこを見ても人だらけで酔いそう。」 「じゃあ、僕を見てるかい?」 エリアスがにこりと笑うと沿道からキャーという女性特有の驚喜の声が聞こえる。 今の笑顔で何人の女性がエリアスに恋に落ちたことだろうか。 「いや、それは逆にヤバイっていうか。」 そう言うとエリアスは ? を頭に浮 かべた。 ハッとし、念のため鼻の下を拭う。 良かった。 少しイケメンに耐性が出て来たのか、鼻血は出ていないようだ。 「もうすぐで街の外に出ます。出れば隊列を少し編成し直して、お嬢様には隊の真ん中の方まで下がって頂きます。」 「ナイトとエリアスは?」 「私はしばらく隊の先頭を引いてきます。それが終わったら、お嬢様の元に戻ってきます。」 エリアスの方を向くとエリアスはまた輝く笑顔でにこりと笑った。 「大丈夫、僕はマコトの傍にいるよ。」 「あぁ、よかった。」 そう言って前を向いた時に沸き立つ民の中に一際目立つ緑の髪が目に入ってくる。 「アルト?」 思わず口に出してしまった エリアスとナイトは不思議そうにこちらを向く。 「あっ、ごめん、知り合いが居たような気がして」 「それは異人のご友人ですか?」 ナイトが聞く。 「いや、違うんだけど、、、」 取り繕い、もう一度見たが、そこに懐かしい姿はなかった。
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