モテ猫

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モテ猫

ある日の朝、仕事に行こうと玄関のドアを開けると、塀の上に一匹の猫が寝ていた。 毛並みは白とグレーのハチワレで、長い尻尾をユラユラと揺れている。 猫は私の気配に気づいたのか、ゆっくりと目を開けた。 その瞳は、透き通った綺麗な青色をしていた。 この辺りでは見ない猫だ。 野良なのだろうか、首輪はついてない。 それにしても、毛並みも綺麗だし整った顔をしている。 人間だったら、さぞイケメンだろうと思った。 猫は私と目が合うと、その目を細めて小さく鳴いた。 その声は、どこか放っておけなくなるような甘えた声だった。 「おはよう」 私が挨拶を返すと、猫はむくっと立ち上がりまた甘えた声で鳴いた。 もしかしたら、お腹が空いているのかも。 そう思った私だが、時計を見ればすでに電車に乗る時刻が迫っていた。 「ごめんね。もう時間が」 そう言いかけた時、猫は塀から飛び降りて、私の足に顔を摺り寄せた。 その時、ふと私は昨夜買ったササミのサラダの事を思い出した。 時計を何度も見ながら葛藤する私。 気づいたら、私は冷蔵庫の前でササミを持っていた。 ササミをあげると、猫はお腹が空いていたのか美味しそうに食べた。 あっという間に時間が過ぎて、会社には大幅に遅れて上司に怒られた。 イケメンな猫に出会えて、運が良かったのか悪かったのか。 徐にため息が出た。 家に帰ると、猫の姿はなく皿の中身は綺麗になくなっていた。
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