隣の席の五十嵐くんは。

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* 「昨日は野々宮だったから、今日は……長谷見。この問題答えてみなさい」 自習になったはずの1時間目の数学の授業で、先生に席を立たされた私は、隣の席に恨めしい眼差しを向けた。 また、やられた。 私の机と、20センチほど離れた机の上で笑いをこらえている五十嵐くんは、いつも嘘つきだ。 ……私にだけ。 確かに、当たるのが分かっていて問題を解いてこなかった私に一番の非があることも分かっている。 だからこそ、登校してすぐに友達に答えを見せてもらおうとか……そんな狡(こす)い手を使おうとしていた……ことも、ちゃんと悪いとは思っている。 それも全部見てたくせに、この五十嵐くんは。 『知ってる?1時間目自習になるんだって』 私はいつも、彼に騙される。
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