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「五十嵐くん、何でいつも私にばっかりくだらない嘘つくの!」
「いい加減気づけば?」
休み時間にたまらず抗議をすると、五十嵐くんはからかうように笑いながら、右手をこちらに差し出した。
私は悔しさが口から出るのをぐっと堪えて、おとなしくその手にキャンディを乗せた。
高校生活も2年目。
2ヵ月前に行われた席替えで、隣の席になった五十嵐くんと私の間には、いつの間にかこんなルールが出来上がっていた。
騙された方が、お菓子を渡す。
そんな、イカれたハロウィンのようなルールが。
といっても、私が貰う側になったことなど、一度もない。
あの数学の答えは、結局五十嵐くんがこっそりと机の下からノートを見せてくれて、事なきを得た。
それについては、感謝しかないけど……。
「答え教えてくれるなら、最初から騙さないでよ!ありがとう!」
「情緒不安定かよ。ウケる」
「ウケは狙ってない!絶対いつか、すごいこと言って驚かせてやるんだからね!その時には、五十嵐くんにクレープ奢らせるから!」
「ちっちゃい目標だな。あ、長谷見、背中にクモついてる」
「ひゃあ!?えっ!?取ってよ!!ちょ、取って!」
「はい、キャンディもう1個な」
私は、五十嵐くんに助けを求めかけた手を止めて、先ほど言われたばかりの言葉を脳内で反芻(はんすう)させた。
いい加減気づけば?
と。
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