隣の席の五十嵐くんは。

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* 「五十嵐くん、何でいつも私にばっかりくだらない嘘つくの!」 「いい加減気づけば?」 休み時間にたまらず抗議をすると、五十嵐くんはからかうように笑いながら、右手をこちらに差し出した。 私は悔しさが口から出るのをぐっと堪えて、おとなしくその手にキャンディを乗せた。 高校生活も2年目。 2ヵ月前に行われた席替えで、隣の席になった五十嵐くんと私の間には、いつの間にかこんなルールが出来上がっていた。 騙された方が、お菓子を渡す。 そんな、イカれたハロウィンのようなルールが。 といっても、私が貰う側になったことなど、一度もない。 あの数学の答えは、結局五十嵐くんがこっそりと机の下からノートを見せてくれて、事なきを得た。 それについては、感謝しかないけど……。 「答え教えてくれるなら、最初から騙さないでよ!ありがとう!」 「情緒不安定かよ。ウケる」 「ウケは狙ってない!絶対いつか、すごいこと言って驚かせてやるんだからね!その時には、五十嵐くんにクレープ奢らせるから!」 「ちっちゃい目標だな。あ、長谷見、背中にクモついてる」 「ひゃあ!?えっ!?取ってよ!!ちょ、取って!」 「はい、キャンディもう1個な」 私は、五十嵐くんに助けを求めかけた手を止めて、先ほど言われたばかりの言葉を脳内で反芻(はんすう)させた。 いい加減気づけば? と。
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