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「はいはい、分かってます。いくらですか?」
かばんから財布を取り出すと、すぐに五十嵐くんの手でかばんへ押し込められた。
「じゃなくて」
「?」
「さっき騙された分」
「……あ」
そっち?
私は、五十嵐くんが買ってきたばかりのチョコの袋を開けて、ひとつをその手に落とした。
「じゃ、明日からもよろしく」
そう言って小さくなっていく背中を、見送る。
……変なの。
五十嵐くんは嘘つきで、ちょっとだけ優しい。
彼が自ら選んだチョコは、50個も入っていた。
少なくとも、それくらいは私を騙す気でいる五十嵐くんは、……やっぱり優しくないかもしれないけど。
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