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嫁として歓迎されているのだと知ることができた途端、愛美はホッとして涙を溢れさせていた。
ラティーファはそんな愛美を見て笑った。
「謝ることなんて何もないわよ」
緊張していたことは解るが、一体何に対して詫びているのだろうか。
ラティーファはそれが解らず愛美の隣に腰を降ろして顔を覗き込む。
愛美は涙を指先全体で払うようにして拭うと鼻を啜った。
「……あたし…っ…今朝寝坊しちゃって…っ……」
「………」
「昨日は“今日は休む日”だ。って、せっかく夕べはゆっくりさせてもらったのに…っ…」
愛美の言葉を聞いて、ラティーファは瞬きを繰り返した。
「ええ。休む日よ?だから寝坊しても構わないわ」
ラティーファはきょとんとしながらそう返していた。
前を見ていた愛美は「え?」っと振り向いた。
ラティーファは当然のように続ける。
「今日は色々やってもらわなきゃ。だからぐっすり休んでもらわなきゃ身体の疲れは取れないわ? まして、あなたはお腹にもう一人抱えてるのよ? 二人分休んでもらわなきゃ。……そうでしょ?」
「………」
「お腹に子を抱えた大変さはザイードよりもわかってるつもりよ? しかも国の後継ぎである子だからなおさら気を使うわ。初めての子だしね」
「………」
「私も一応、経験者だから」
「──……」
ふふっと笑ったラティーファの言葉に愛美は、はっとした。
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