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そうだ──
ザイードの母であるラティーファは、自分が今から辿ろうとしている道を実際に歩んだ経験者なのだ。
だからこそ、ここへ来たら。ザイードの母に会ったなら。聞いておきたい事が沢山あったはずだ。
優しく微笑み前を向いたラティーファの視線の先を愛美も追う。
そこには広大な緑の丘と青い空。
そして柔らかそうな白い雲が一つのパレットに収まり色を成す。
ラティーファは遠目にその景色を眺めながら口を開いた。
「孫の顔を見るのがほんとに楽しみだわ……」
そうポツリと呟いたラティーファは嬉しそうにしながらも、少し寂しげだった。
ラティーファは自分を見つめる愛美を急に振り向く。
「私、思ったの!やっぱり変よね?」
「え?……変?…」
「そうよ! 変よ! やっぱりダメよ!」
「……っ…」
大きな独り言を呟きながら自分で頷く。愛美はそんなラティーファに圧倒されながら見つめる。
ラティーファは急に愛美の肩を両手で掴んだ。
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