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何かを確信したようなラティーファの表情に愛美は飲まれる。
「マナミ!」
「はい…っ…」
「王家の仕来たり、仕来たり、仕来たりっ…いつもそうだったわ!二言目には“昔からそうされてきた”…って返されて、でも今思うとほんとにそんなのバカらしいことよ」
「……っ…」
ラティーファは勢いに圧倒されている愛美を覗き込む。
「母親なのにっ…役にも立たない仕来たりのせいで我が子の傍に居ることができないのよ? 子が母親を求める大事な時に──…っ…私はザイードに何もしてあげられなかった…っ…」
ラティーファは言い終わるとその場からすくりと立ち上がった。
「決めた!イブラヒムに言うわ!」
「えっ?…な、なにをっ?」
愛美も慌てて立ち上がる。
「もちろん、マナミにもそんな思いをさせるのかってことよっ!私が言わなきゃ誰が言うのっ?」
「た、たしかに…っ…」
勇ましい表情を覗かせて言い切ったラティーファに愛美は戸惑いながら頷く。
「大丈夫!私が守るわっ…母親の辛さは母親にしかわからないのっ、昔は何度言ってやろうかしらって思ってたわ!でも言えなかった!私も若かったのねっ…ちょっと待ってて」
「ええっ…お、お母さ…っ…」
歩き出したラティーファを呼び止め掛けて、愛美は言葉を止めた。
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