番外~草原の花咲く丘で…~(後編)

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・ 厩舎の方からは祖父のナーセルから携帯電話を奪ったであろう母、ラティーファの早速怒鳴る声が聞こえてくる。 ザイードは笑った。 「この件は暫く母に委ねて置こうか……」 若輩な経験不足の王子より、きっと母の方が説得力があるに違いない。 ザイードはそう考えながら馬の手綱を牽くと、愛美の手を握る。 愛美は隣に寄り添いそんなザイードを見上げた。 目の前に広がる景色を見つめるその表情は、やはり親子なのだろうか。先ほどのラティーファの少し悲し気な表情と重なって見える。 ザイードは澄んだ空気を静かに吸い込んだ。 「母が口にしなければマナミにも同じ思いをさせるところだった……」 笑みを浮かべながらも反省したようにそう口にする。 そして……幼き頃に味わった思いを自分の我が子にもさせるところだった……。 古い歴史には受け継いでもらいたいものもあれば、断ち切らなければならないものもある── 変えるべきだ── そのために王になると決めたのだから。 マナミと歩きながらザイードは前を見据える──。 強い目差し 悠然たる歩き 覚悟を決めた意志の中に厳しさが垣間見える──だが、愛美の手を握るザイードのそこだけはとても優しかった……。
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