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「やる事がある時は嫌ってほど仕事をあげるわ。だから休める時にしっかり休む──……これがこの村のしきたりよ」
ふふっと口から笑みを溢し、ラティーファは軽くウインクをしてみせる。
何もしない日とはっきり言われてしまえばやむを得ない。
仕方なく腰を据えると出されたお茶に手を伸ばし、愛美はそれを口に含んだ。
「……っ!?…」
その途端、愛美は驚いて目を見開いていた。
口に含んだ茶の味の渋いことと言ったらない。
ザイードはそれを見て思いきり笑い出した。
「びっくりした?」
茶を出した張本人。ラティーファは愛美を覗き込む。
「す、……少しっ」
「それは嘘だな。少しどころじゃないだろう?俺だって初めてこれを飲まされた日はひっくり返った程だ」
「ひっくり返っただけじゃないわ。大泣きして手が付けられなかったのよあの時は」
愛美の言葉を否定したザイードはラティーファに逆に過去を指摘され、苦い笑いを浮かべていた。
初めて母の祖国であるこの村に連れてこられた時。ザイードはとても幼かった。
だが、あの鮮烈な茶の味だけはしっかりと記憶にある。
一口、口に含んだ時のあの刺激。舌を刺すその渋さに驚いて確かに泣きじゃくった。
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