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ラティーファは仲良く目を見て話す二人を見つめ、笑みを浮かべる。
自分の事をどう語ればいいのか悩む不器用な息子。ザイードを見守りながら、ラティーファは夕食の準備に取り掛かった。
「二人とも今夜はゆっくり身体を休めてね。マナミは明日は私とヤギの乳を搾るわよ」
早い夕食を訪れた親戚の皆で囲みながら、会話が弾む。
ラティーファの年の離れた妹弟。ザイードからすれば叔母と叔父にあたる。そしてその子供達、ザイードの従兄弟の子供。姪や甥、全員が一ヶ所に集まれば大家族だ。
愛美はヤギの乳搾りと聞いて頬を緩めた。経験したことのない作業でとても楽しみだ。
「ザイードは叔父さんを手伝ってちょうだい」
「ああ。明日は何をするんだ」
母に指示され、ザイードは隣から回ってきた料理を自分の皿に取り分けながら尋ねていた。
愛美はその光景に目を見張った。城では見たこともない雰囲気だ。
まるで家長のように次々に役割を分担して決めていく。その母に当たり前のようにあの俺様なザイードが従っている──。
ザイードにとって母は絶対的存在であることを感じながら、愛美はラティーファを尊敬の念で見つめていた。
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