開発会議をしよう

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「本日は昼一番からよく集まってくれたな、諸君」  A社の会議室に社長の声が響いた。その声に雪乃、沙月、華子の3人が頭を垂らした。社長は上座の椅子を鳴らしてから、コーヒーを啜り、本日の資料に目を通す。  本日の議題は『売り上げ向上が見込める入浴剤の開発』である。  A社は従業員が20人ほどの小さな製造メーカーだ。入浴剤の開発・製造を生業としているのだが、最近のユーザーの「お風呂離れ」が及ぼす業界の変化に依存して売り上げを落としていた。  これではいかんと会社全体からアイデアを募集したが、従業員とはいっても1ユーザーだからだろう。業界の再現としかならず結果は振るわなかった。  その結果として企画されたのが本日の会議だ。同席している3人は会社の中でも変わり種であり、なおかつーー 「社長……華子さんが寝てます」 「……すまん、起こしてやってくれ」  意欲が感じられない3人だ。  華子は眠り、雪乃は恋愛、沙月は食欲にそれぞれ忠実であり、肝心の業務はお世辞にもできる方ではない。  普段であれば注意すべき対象であるが、こと今回に関しては新しい案を期待する女神達だ。この3人は事前に募集した際に、一度もアイデアを提出してこなかった。ゆえに、自社で何か革新的なアイデアが出るとすればこの3人以外には居ないだろう。 「華子、会議の時間になったよ、起きて」 「んあー、もう昼休み終わったのー?」  雪乃が肩を揺さぶって起こすと、華子は寝ぼけ眼をこすりながら身体を起こした。おでこが赤くなってるのはご愛敬だが…… 「待て華子君。いつからここに居るんだ?」 「あれ、社長……? 昼休みが始まってからずっとですよ」 「ずっとって……昼食は食べたのか?」 「何言ってるんですか? そんなものより睡眠の方が大事です!」  バン、と机を叩きつけて恫喝する華子。正直なところ「お前が何を言っているんだ」と思うのだが。 「社長さん、華子はいつそんな感じですよ。何言ってんだって感じですよね」 「沙月君、おさつスティックを食べながら言ってる君も何やってんだって感じだが」 「社長さん! まさかこの会議は飲食禁止ですか!? 2時間も枠取っておいてそんな殺生なことを仰るんですか?」 「……そんなに死にそうな顔をしなくてもいい。今日だけは特別だ。許可しよう」  わーいやったーと無邪気な声を上げる沙月に呆れながら、会議は始まった。
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