2人が本棚に入れています
本棚に追加
/4ページ
おかあさん!タクシーでディスカウントストア行きますか?
もし? わたしよ。わたし、わたし、わたしだよ」
「は? 水原ですが、どなた様?」
「わたしだよ。わたしわたし!」
あからさまな手口だったので問答無用でガチャ切りする。
すると、打てば響くように着信音が鳴る。
「何切ってんのよ! 麻以!! わたしだよ、わたし!! わからないのっ?」
「えっ?! おかーさん???」
後期高齢者である母から逆オレオレ詐欺電話がかかってきた。わたしがカムアウトしてからガタが来ていたみたいだが、女子と結婚します宣言してから拍車がかかったようだ。
しかし、母に苦労を掛けているのは父のほうだ。年金生活者のくせに朝から晩まで飲んだくれて家計を圧迫している。父は大食漢のうえ美食家だ。隙あらば厨房に立ち、酒の肴を焼いている。
極端なきれい好きで母親が作った料理には一切手を付けない。
すべて自分で賄わないと気が済まないのだ。それで実家の献立は独立している。
冷蔵庫を満たすことを良しとせず、買ってきた食材はその日のうちに処分する。
そんなわけで土用の丑の日にウナギを丸ごと一匹買ってきたり、高価な背の青い魚を自分専用に購入したり湯水のごとく食費を使う。
おかげで台所は火の車だ。
最初のコメントを投稿しよう!