おかあさん!タクシーでディスカウントストア行きますか?

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そんな母親が娘である(いちおうは身体も戸籍の性も生まれた時のまま)わたしに助けを求めてきた。 母は生まれつき心臓が丈夫でなく、最近はほとんど寝たり起きたりの毎日だ。 それなのに調理以外は一切の家事分担をしようとしない父のせいで這うように掃除洗濯している。 わたしがやればいいのだけど、実家に居づらくて飛び出した。まぁ、週に一、二度は帰省して戦後処理をしているのだけど、焼け石に水だ。 母娘の関係は高校卒業いらい最終戦争前夜の状態にあったが、母親の高齢化に伴い雪解けしつつある。 「もう、しんどくって、しんどくて、お父さんのお酒を買いに行くのも大変なの」 母親がいうには、多い月でビール二ケース分も空にする。 それけでない。日本酒の一升瓶も買い物カートに加わる。 「いったい何本飲んでんのよ?」 わたしが半ば呆れつつ訊くと「40本よ。おとーさんたら月に40本もビールを飲むの」という素晴らしい答えが返ってきた。 「自分で買いに行かせればいいのに!」 父親の非常識ぶりにわたしは殺意すらおぼえた。 ところが、わたしの提案が実行できない事情がある。 母から聞くところによると、父は隙あらば無駄遣いを企てるという無芸大食っぷり。 彼に言わせれば俺の手で作ったもの以外は口にしたくない。     
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