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いつもと変わらない朝。
けたたましく鳴り響いた目覚まし時計は、定位置から枕のそばで転がっている。
毎朝思う……寝坊するなら早く寝れば良かったと。
不眠症とまではいかなくても、夜の時間はそこはかとなく私を魅了するんだ。
寝衣のまま、適当なものを選んで朝食を済ませて身支度をする。
慌ただしいのは家族みんな一緒。
母親の声が部屋に響く……「早くしないと遅刻するよ!」
遅刻しても死ぬわけじゃないのに、とても必死な脅迫めいた言い方をする。
8歳下の弟の返事が悪気もないものだから、余計にイライラするのだろう。
「分かってるよ、行って来ます……!」
「今日は真っ直ぐ塾に行くの?」
「ん、帰り迎えに来て」
言いながら玄関のドアの向こうへと駆け出して行く。
次に私に目が留まると……「紗夏は?」
同じ質問なのだと思い、答える。
「多分、帰り遅いと思う」
「そう、じゃあ夕ご飯ゆっくりで大丈夫ね」
少しほっとしたのか声色が和らいだ。
「お母さん、何かあるのかい?」
「っ、今日ね、友達に誘われてて出掛けるの」
納得したのか、父親はそれ以上問い詰めなかった。
次の質問を待っていたのに、拍子抜けしたらしい様子の母親だった。
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