〖Cleanup〗

10/33
前へ
/33ページ
次へ
「大丈夫、大丈夫。今日のお仕事はお母さんとお父さんに任せているから。実はウチの両親は働きたがっているのよ。お父さんなんか自分の会社が休みの日なのに忙(せわ)しいのよ。そもそもお父さんって定年退職してるのね。それでも自分の会社でまだ働きたいから、嘱託社員として雇ってもらって、また働いているぐらいのヤル気マンマンっぷり。別にお金に困っている訳じゃないのに、我が家。大義名分としては、これからは年金の当てにならない時代だから、私の為に貯金してるんだって、なんて言ってたけど。むしろ感謝しなさい、みたいな感じで父親の威厳ビームを発して接してくるからイタいだけよ、私からすれば。それにお母さんも全然元気だし、お客さんと話すのが大好きだし、腕も腰もしっかりしてるし、持病もないからそれは動く動く。元々は、私が就活にグズグズしてたから、実家の花屋を両親は継がせようとしただけで、ウチの両親って本来は現役バリバリの いまだに働き盛りなのよね。お母さんとかは私の経営の仕方にもいちいち口を挟んでくる始末だもの。花屋はお母さんがやり始めたから、創業者面がスゴいの。まあ、私も一応は花屋の娘ですからね、子供の頃からお花は好きだし、その家業を継ぐ事に違和感はないけど、あれだけ店長の私を差し置いて、シャシャり出されると困っちゃうわよ」 「はは、典型的なワーカホリックって感じのご両親だけど、やはりある程度年齢がいっちゃうとヤル事なくなっちゃうから、そういう風にルーティン化した行動になっちゃうんじゃないかな。だけど好きでやっている事だろ。むしろ羨ましいよ。俺みたいにグレーな中小企業に勤める、組織の歯車若手サラリーマンからすれば。石田の両親は活き活きして働いていそうでさ。いや、労働ってよりも、もう趣味の領域なのかな」 「そうかもね。まあ、楽しそうに夫婦仲良くやっているけど」  愛美は大学卒業後、特に就職活動はせず何の迷いもなく実家の花屋を継いだ。一方で草刈は人並みに就職活動をして、中小の商社に入社した。大学卒業後から一年半経ち、社会人としての落ち着きも出てきて、それぞれ適度に仕事の忙しさと普段の生活をエンジョイしていた。     
/33ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5人が本棚に入れています
本棚に追加