〖Cleanup〗

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 高島が事故死するまでは、本当に俺たち三人は何の波風もなく、普通の人生を送っていたな。  若すぎる親友の死。所謂、何の波乱もなく育ってきた草刈からすれば、幼馴染みの突然の死は映画やドラマなどのフィクションの世界からやってきた戸惑いの産物。草刈はその現実を受け止めるにはまだ時間がかかりそうだ、と心構える。  石田はもうある程度心の整理が着いたのか。葬儀の時の涙顔から今の表情を見れば、憔悴した感はあるものの、だいぶ顔つきは朗らかになっている。それに、葬式の際でも悲しみを堪えて、一輪の白い花を高島の柩に入れていて健気な一面は既にあったな。  花の知識に関して疎い草刈には、愛美がそっと高島の柩に入れた花は分からなかった。その時に愛美が高島に落とした花はネリネ。ヒガンバナ科の花で見た目もヒガンバナに似ていて、花の先はカールがかって開き、花色は白以外に赤やピンクや紫などがある。また、花に光が当たると宝石のように輝くのでダイヤモンド・リリーとも呼ばれている。  無論、花の種類すら分からない草刈にとっては、単に高島への手向けの花としてしか認知していなかった。それは今も変わらず。そのような草刈なのだから、ネリネの花言葉など知らないのは至極当然。     
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