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ネリネの花言葉は、また会う日を待っています、である。
その花言葉の由を知っていれば、はたして愛美の心情に察して然るべき考えを、草刈が出していたかは分からない。今になって、高島の柩に何の花を贈ったのかを聞くのは、野暮な事だと草刈は思っているので、もはやその愛美の行為は草刈の中では寝かせ続けている。実際、草刈本人にとっても既に気にする事案ではなくなっていた。
今はお互い自分のペースで生活を送る事が良いのかも知れないな。
我ながら殊勝な心懸けだな、と草刈が自画自賛気味に思っていると、愛美が草刈の顔をテーブル越しに覗き込むような姿勢をとり、
「それよりも俊太郎の方の仕事はどうなのよ。グレーな会社みたいな事を言っているけど、ちゃんとやっているの。疲れてない?」
「俺は大丈夫だよ。体は頑丈な方だし、メンタル面もタフだと思っているから」
「そうやって妙に自信満々の人の方が、イザという時に心がポキっと折れちゃうのよ。自己管理って意外と難しいんだから。案外、自分の事って自分では分かってない部分がたくさんあるものよ」
自分では自分の事を分かっていない。何気なく愛美が発したその台詞に、草刈の脳裏に一つの疑問がよぎった。
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