〖Cleanup〗

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豪快に死んだ所で、というか自分的には壮絶死して肉片ゴロゴロ、脳ミソも散乱しまくったはずだ、と思っていたのだが、どうにも幸か不幸か意外とキレイな死体でやんの。直接の死因はフロントガラスに突っ込んだ果ての、さらにはアスファルトに直撃したがゆえの頭部の強打。確かに車も大破してなかったしなあ。いまいちバニシング不足だったか。俺としては四股炸裂のスプラッターなド派手な死に姿を望んでいたんだが……。って、話が少し逸れてしまった。要は悲しんで泣いてくれた過去の女は、どうやら見当たらなかったのは納得、という事を言いたかったわけ。  だが、そんな俺でも泣いてくれた人間ってのも少しはいる。とりあえず両親は泣いてたかな。あと唯一の同性の友人であり、小学校からの付き合いがある草刈(くさかり)俊太郎(しゅんたろう)。  そして、やはり幼馴染みの石田(いしだ)愛美(まなみ)。  この愛美っていう女は俺というナイス・ガイが子供の頃から近くにいたっていうのに、全然俺になびかない。そう、異性では稀有な珍種だった。なかなかアイツに彼氏ができないから、友人として忖度した俺が何度か「仕方ねえな。じゃあ、俺がお前を抱いてやるよ」と言ってやったにも関わらず、その度に往復ビンタのラブ・コールで返してきやがるし。イヤよイヤよも好きのうちってのは分かっているのに、なかなか素直じゃない女だったな……ふ。兎にも角にも、あれだけ俺と長い時間、人生を共にしていたのに、俺に身を委ねなかった女はアイツ一人だった。     
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