〖Cleanup〗

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 そんな愛美の事が俺は死後になって、少し気にかかってるわけだ。この俺に内心惚れてるくせに、ずっと拒んできたような女だ。腰に手をかけたぐらいで強烈肩パンをして反撃してくるような、ハラスメントかつヴァイオレンスな娘だ。そんな気の強いアマゾネスのワンダーウーマンな愛美が、俺の葬式では号泣していて、俺の死後一ヶ月経った今でもどうにも立ち直っている感がない。流石に女に対してはサイテー野郎を自認している俺でも、つーか、愛美は俺からすれば女じゃないが、一友人としてはちったあ憂慮してしまうわけ。俺だって血も涙もないわけではないから。肉体は燃やされて文字通り血も涙もなくなっちゃったけど。それにやり残しというか、後始末したい事もあるっちゃあるし……。  そこで俺はてっきり漫画の世界だけの存在だと思っていた死神が霊界にいたんで、ちょいと相談してみたわけよ。真っ黒いローブを着込んで鎌を片手に持った、黄金バットみたいに骸骨なヴィジュアルの、想像通りのそのまんまな死神様に。確かに俺はアンモラルで男として人として底辺な生き方をしてきましたけど、幾らなんでもこの若さで死んじまうのはどんなものか、と。あまりにも唐突な死にっぷりだったので、せめて死ぬ前に一度は早朝のゴミ拾いでもバアさんに電車に席を譲るのでも良いから、何か善業をしてから死にたかった、と。そしたら、あっさりと死神のヤツ、暫定的に俺を生き返らしてやる、とか言ってやんの。     
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