〖Cleanup〗

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どうやら俺って本来なら死ぬのは首都高で事故る二週間後ぐらいだったらしく、中央道のパーキング・エリアでナンパ巡りの最中に、マッド・マックスばりにアナーキーかつクラッシャーな事故を起こして散華、という予定だったのだそう。だから、死んだのが早まった分、生死査問委員会がまだ俺を地獄送りにするか、天国送りにするか急遽審議中だってのこと。つーか、何だよ、生死査問委員会って。そんな手続き事は閻魔帳とかに書いとけっての。マイ・ナンバーのご時世に紙の記録媒体も何だが。  ま、人間界の言葉で言えば、事務処理でのミスみたいなもんで、その俺の天国オア地獄の審議期間中なら、蘇りを許可してくれるんだと、特別措置で。一応はこの世に対して滅私奉公の行為をすべく理由を大義に。裏心としてはもっと女を抱きまくりたいという、個人的な意思を秘めたまま。  という事で、俺はラッキーにも(仮)という形で黄泉がえりを果たす訳ね。あ、愛美には東京ばな奈かナボナでも渡してやれば元気になるだろ。いやはや、それよりも下界に戻るが故に、下(シモ)が疼くね、テヘヘ!                     *                   * 「へえ、そうなんだ」  石田愛美は柔和な声で言葉を返す。その相好は崩れているようにも窺える。 だが、何処か彼女の笑顔には陰りがある。 草刈俊太郎は自らが先ほど喋った自分の会社の愚痴と仕事のミスの話を冗談交じりに諳んじた事が、石田愛美にとって逆に気を遣わしただけになったか、と思いがけなくそんな印象を受けた。  仕事休みの土曜日の昼下がり。     
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