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石田愛美と草刈俊太郎は都内でも有名なパスタ屋にいた。テレビにでも紹介された有名店だが、お上りさん気分もそこそこに草刈が何とか混雑する状況の中で予約を取って、友人の愛美を誘い長閑な午後を過ごしている。
昼食も一通り終え二人は断続的に会話をする。愛美はジャスミン・ティーを片手に。草刈はエスプレッソを片手に。お互い何ら気を置く事なく、時に訪れる沈黙の時間も余裕すら感じるような、二人の距離にして関係。傍から見れば若い身空の二人。男女の長い友人関係の間柄か、それ以上の仲にも見て取れた。確かに二人は知り合ったのは幼少期。しかし、子供時代、仲良く友人として遊ぶようになったのは、高島浩介がその中にいたからだった。だから愛美にとって草刈は幼馴染の異性の親友。草刈もその気持ちは同じだった。そんな親友の愛美だからこそ、草刈は一点の曇りもない彼女の元気な笑顔を見たかった。いや、その破顔一笑を導き出そうとした。
高島浩介が生きていた頃に見せていた、草刈の好きだった愛美の屈託のない喜色満面の微笑みを。
まだ高島の事故死から立ち直れきれていないな。
草刈は直感的にそう思う。長年の友人を突然失った事にショックを受けるのは当たり前の事である。それにまだ高島の死からはまだ二ヶ月を経たばかり。草刈の心象にも高島の遺影の残像は残っている。愛美にとってもそうであるが、高島浩介は草刈とっても幼馴染の親友であるのだから。
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