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女に対しては史上サイテーな奴だったけど。
草刈は内心そう思い一人苦笑いをすると、その様子を見ていた愛美は不思議そうな顔をした。その愛美のリアクションにやはり気づいた草刈は、眦(まなじり)を決する覚悟、という程ではないが、勢いはそれに近いまま愛美に尋ねた。
「高島の事を考えているのか?」
愛美は一瞬、驚いた表情をして肩をすくめると、
「な、何で私が浩介の事を考えているのよ」
「頬のチークが薄いから」
そう草刈が答えると、愛美は薄らと笑い、
「普段から私はチークなんてしてないでしょ。ファウンデーションも頼っていませんからね」
と言いながら何の細工も施してないネイルの指で、ジャスミン・ティーを飲んでいるストローをグラスの中でかき回した。草刈もエスプレッソのカップを揺らしながら、それに目を落とし愛美の視線を避けて言葉を紡ぐ。
「強がるなよ。まだアイツが逝っちまって間もないんだ。俺だって正直まだ高島が死んだっていう現実感がない」
「…………」
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