〖Cleanup〗

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 黙り込んだ愛美は特に草刈の言葉に反応しないまま、ジャスミン・ティーを口に運んだ。そんな愛美の顔を見て草刈は思う。高島の事故死の後、愛美はセミロングだった髪をショートにした。本人は、何となくの気分転換よ、と淡白に言っていたが、草刈からすればその行為は高島を失ってからの一つのケジメにも映った。 哀しみとの訣別のための。 あくまで気丈に自分に対応する愛美。明るさを振る舞い、いちいちの所作も和やかな雰囲気を自分に与える愛美。だが、草刈はそんな愛美の姿に弱々しい笑みを覚える。陰りがある。高島の葬式の際に泣きじゃくっていた愛美の残像がよぎる。 仕方ない。まだ親友の喪失感から癒えるには時間がかかる。いや、石田にとっては親友以上の存在だったはずの高島浩介の死は、俺が考えている以上に相当の長い時間が要するのかも知れないな。俺がどうこう言って彼女の気持ちに土足で入り込むのは、酷だしデリカシーにも欠ける行為だ。自重しないと。 草刈は自分なりの気遣いをもって、愛美とは接するようにしようと、胸三寸にそう抱いた。 すると愛美は大きく深呼吸をして、 「テンバーツ」  と間の抜けた感のある声を発した。草刈は虚を突かれた表情になり、 「は?」 「浩介はこの世でたくさんの女の子を泣かせたから、天罰で若くして死んじゃったの。神様を怒らせた、多分、女神様の方を怒らせたんだと思うんだけど。それで懲らしめられちゃったのよ、きっと」  愛美は冗談っぽくも、蠱惑(こわく)じみた声音で言った。草刈は顔を崩し、     
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