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「新年度なんだし、平地に戻すチャンスですよ。藤田先生が雪崩の被害に遭う前に何とかしてあげてくださいな」
「え~、まだまだこれ、天狗山レベルですよ。大雪山レベルになったら考えます」
「私には富士山レベルに見えますよ。ねえ、藤田先生?」
同性のベテラン、八木先生から同意を求められたけれど、どちらの味方にもなれず、曖昧に笑うことしかできない。
こんな時に限って、五年二組担任の渋谷先生は、席を外しているなんて。
「確かに凄い山ですけれど、甲賀先生はお忙しかったから仕方がないですよね」
「さすが藤田ちゃん! よく理解してくれてるな。そうなんだよ、俺だって好きで『山』作ってる訳じゃないさ。もうちょっと仕事が落ち着いたら石狩平野に戻すから、それまで待っててくれるよな?」
「もちろんです。でも、八木先生の『雪崩注意報』が『警報』になる前にお願いしますね」
八木先生に向けて笑いながら言うと、そちらでも頷いているのが見えた。
甲賀先生は発掘したプリントを手渡しながら、八木先生には聞こえない位の声量で囁く。
「うまく切り返せたな。ちょっと意外だ」
意外って、どういう意味?
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