275人が本棚に入れています
本棚に追加
「先に教室で作業を始めて欲しい。俺もちょっと自分の教室にモノを運ぶから」
「はい、それじゃあ、お待ちしていますね」
まだ殺風景な教室に、ひとりでいるのは結構寂しい。
甲賀先生、早く来てくれないかな、などと思いつつ、さっきの会話を思い出してくすっと笑う。
ここに六年二組の子ども達三十人が座り、賑やかに学校生活を送る様子を思い浮かべながら、ロッカーと机と椅子に名前シールを貼る作業を開始した。
この校舎は、築三十年近く経過していることもあり、結構寒い。
なかなか暖まらない教室で、寒さに震えながらのシール貼り作業は、手がかじかんでスムーズに進まない。
やっと全てのシールを貼り終わったちょうどその時、教室のドアをノックする音が響いた。
「はい」
「さて、何をして欲しい?」
にやっと笑いながら、教室へ入って来た甲賀先生に、私は遠慮せずにどんどんお願いする。
最初のコメントを投稿しよう!